封も切らない手紙は、執事のチャールズが何も言わずに定期的に部屋へと入り机の上に積み上げた。

 その手紙の差出人の名は、なんとなくはわかっている。だからこそ、今は読みたくなかった。きっと、私には理解し難い。何か言い訳のようなものが、それらには書かれているんだろう。

 下手人クレメントは私の心の中で火炙りの刑に処すべきだとは、思った。

 もちろん。それなりに教育を受けているので、こんな……何の関係もない誰かから見れば、全く大したこともない。小さな色恋沙汰で、そんな刑が執行される訳がないのもきちんと理解してはいる。

 けれど、私の中では、ある意味では被害者であるランスロットも許し難かった。クレメントの非道な真意を知っていたなら、彼に騙されていた私にすぐに真実を教えてくれれば良かった。

 彼に恋に落ちてしまうより、その前に。私を傷つけたくなかったなんて、彼の欺瞞でしかない。

 きちんと最初から全部を話してくれたら、こんなにまで傷つかなくて済んだ。

 そうしたら、こんなに。こんなに。世の中の全てを壊してしまいたいくらいにひどい思いに、ならなくて済んだのに。

 もう誰も。何も。許したくなんか、ない。