剣呑な様子で対峙していた二人はここに居るはずのない私の声を突然聞き、本当に驚いた顔をした。

「ディアーヌ?」

 呆気に取られた表情のクレメントが、私の名を呼んだ。出来る限り、心の奥底から湧き上がってくる侮蔑の気持ちを余すところなく視線に込めて睨んだ。

「本当本当。私も、偶然だけど聞いてしまったわ。これは大問題よ。王宮騎士団を統括するコンスタンスに、炎の騎士の騎士らしからぬ非道な悪行について。お知らせしなくては、いけないわね」

 いきなり血相を変えて飛び出した私を追いかけてここまでやって来たんだろうラウィーニアは、のんびりとした声で言った。

「ま……待ってください。俺は……」

 騎士らしく凛々しく端正であると言えるクレメントの顔は、目に見えて青ざめた。

 いくら国を守る要となる筆頭騎士で仕事さえ出来ていれば、ある程度の行いは許されるとは言え、王太子であるコンスタンス様もこれを聞けば眉を顰めるだろう。

 人に悪印象を与えるには、持ってこいな非道なる行い。