「ディアーヌが気にしている事は、この先どれだけ時間を掛けたところで、同じ事でしょう。それなら、すぐに付き合った方が時間に無駄がなくて効率的だわ。出世確実の、美形騎士よ」

 彼らの主君である美形の王太子と婚約しているラウィーニアは、お茶菓子を頬張りつつ肩を竦めた。マナーに沿っているとは言えない仕草も、四六時中周囲に視線のある王宮では決してしないだろう。けれど、気を抜きたい時もあるのか従姉妹の私の前でだけは見せることもある。

 世の女性皆が羨むような美形な王子様の婚約者の立場を勝ち取ったとて、お伽話みたいに二人は幸せに暮らしましたでは終わらない。一日中誰かに試されるような、世知辛い現実は続いていく。

「ランスロットの人となりも、まだわからないのに?」

 眉を寄せている私に、ラウィーニアは不思議そうな顔をした。まるで簡単に解けるはずの問題を前にして頭を悩ませる生徒に対し、何故解けないのと思っている教師のように。