ランスロットは私にレジュラスまですぐに帰らない理由を皆までは、言わなかった。

 何処でも働いた経験のない私でもわかることだけど、これは全員で口裏を合わせて「こういう事にしておこう」という類のもの。

 即刻帰国をしてしまえば王太子たるコンスタンス殿下は、元々は大臣でもあったはずのファーガス・ジェルマンを捕らえ、本人からも彼が何かを企んでいたという真相を探り出さねばならない。

 とても面倒な案件の総指揮を取らねばならぬ上に、通常の政務だって彼を待ち構えている。

 すんでのところで救い出すことの出来たラウィーニアと、多忙な生活に戻る前に二人で少しでも過ごしたいと願うのは、仕方のないことなのかもしれない。私にとっても、とても納得出来る理由だった。

「……私も。こうして船に乗って海に出るのは初めてだったから、少しの間とは言え船旅が楽しめて嬉しい……ジェルマンは捕らえられて、こちらの船に?」

 私はすぐ隣にあった太い腕を抱きしめて、顔を寄せた。