「ディアーヌ。帰りは、二日間掛けて帰ります。そのつもりで居てください」

 帰って来たランスロットは、灰色の騎士服を脱ぎあっという間に上半身裸になった。

 一線を越えたばかりとは言え、私は直視に慣れているとは言えない。艶めかしい鍛え抜かれた彼の身体は筋肉の配分も申し分なく、美術館に芸術品として飾られてもおかしくないと個人的には思う。

「……帰りは、どうしてすぐに帰らないの?」

 私はゆっくりと体を起こして、ベッド際に腰掛けたランスロットの隣に座った。

 なんとも刺激的な肉体を晒す彼は、とりあえずこれからの流れの説明を私に先にしてくれるようだった。

 ジェルマンが私たち二人を誘拐し国外脱出を謀ろうとしていた船より、段違いに速度を出せる軍船に乗っている上に、追いかけている時の風の騎士の巻き起こす追い風は凄かった。

 あの速度で進む事が出来るならば、一瞬でレジュラスに帰港出来てしまうはずなんだけど、何かそれが出来ない事情があるのかと私は首を傾げる。

「コンスタンス殿下は……帰れば、当分の間激務にならざるを得ないので」