レジュラスの筆頭騎士達が乗り込んで私たちを救出に来たと思われる船に対して、ジェルダンが手配したこの船は、こんなに強い追い風が吹いているというのにやけに進みがのろのろとして遅い。

 大きな船を取り巻くように白く凍っていく海水のせいかと思えば、それだけではなさそうだった。

 すぐ後ろに居たラウィーニアに肩を叩かれて促されるままに空を見上げたら、大きな帆は見るも無惨な様相でズタズタに引き裂かれていた。そして私は風の騎士が作り出すことの出来るという、何でも切り裂く空気の刃の噂話を思い出した。眉唾ものだと思っていたけど、その威力をこうして目の前にすると何も言えずに圧倒されてしまうしかない。