けど、子どもの頃から甘やかされていた私は……きっと、考えたくもない経験を乗り越えられるほど、強くないと思う。自分勝手だとは思うけど、心を壊されてしまう前に逃れたかった。

「ごめんなさい。ディアーヌ。巻き込んでしまって、ごめんなさい。私が……」

「言わないで。ラウィーニアが、幼い頃から憧れの王子様……コンスタンス様を好きで、沢山頑張った事を私は誰よりも知っているもの。自分が候補の中から王太子妃に選ばれたのを、誇りに思って。私の人生だもの。私が決めるわ」

「ディアーヌ。ごめんなさい……貴女の家族やランスロットも、クレメントにも。私は、恨まれるでしょうね」

 ぽろぽろと涙をこぼすラウィーニアは、確か王太子妃の候補になってから私の前で泣いた事がなかった。

 きっと、人前でなくてもずっと涙を堪えていたんだと思う。

 王族は常に平静を保ち、誰かに感情を見せてはいけない。付け込まれる隙を、与えてしまうことになるから。そう何度も厳しい家庭教師に諭され怒られているのを、いつも彼女の近くに居た私は見たことがあった。

「もう……クレメントの名前は、もう良いわ。別れてるのよ。ラウィーニア」