「ここは、船の中よ……ジェルマンは、このまま海を渡るみたい。もし、コンスタンスが私たちの誘拐に気がついたとしても、こちらは海の上よ。きっと、彼にも行き先はわからないわ……レジュラスは、大国と言われているだけに、敵も多いものね。船では追っ手も足取りを追うのは難しい……すぐには追っては、来れないでしょうね」

 ラウィーニアは、難しい表情をして私たちの今居る現状を説明した。

 もう既に海の上。救助を待つのは、絶望的。そして、簡単に出てしまう結論。

「ラウィーニア……私。自分の事は、自分で決めるわ」

 出来るだけ感情を見せずにぽつりとそう呟けば、目の前に居るラウィーニアは、私の言葉の意味を悟り表情を変えずに涙をいくつもこぼした。

 王太子の婚約者であるラウィーニアは、もしかしたらレジュラスへの交渉のために、完全に無事で居られるかもしれない。

 けれど、そこまでの利用価値を持たない私は、こういったある意味では閉鎖された空間で彼女への見せしめを含めた慰み者にされる可能性が高かった。

 私だってラウィーニアをこんなところに一人で残すのは、嫌だ。