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 大きな箱のような馬車に乗り換えて、鎧戸のある窓からはほんの少しの光も差さない。明かりもない闇の中で、私はラウィーニアの温かい手を握っていた。

「最後までは、諦めないでいましょう。ディアーヌ。そういえば、貴女の恋人と元彼は筆頭騎士だし……筆頭騎士って一人で、一個師団を倒せるのよ。知ってた?」

「一個師団の人数が、わからないわ。とにかく、何だか凄そうではあるけど……元彼のクレメントは……関係なくない?」

「向こうは、絶対にそう思ってないわよ。この前だって未練たらたらな様子だったし。大体の男性って、別れた女は別れてもずっと自分の事を好きだと思っているらしいわよ」

「そんな訳ないでしょ。あんなひどい事をしておいて。もしそうだとしたら、大分おめでたい頭だと思うわ」

「別れてしまえば、悪いことは忘れてしまって。付き合っていた頃の……良い記憶だけが、残るのかもしれないわね。それはそれで、幸せな事だと思うわ」