グウィネスの言葉に、椅子から立ち上がっていたクレメントは無言で頷いた。どうやら、私たちは大変な思いをして抜けてきた森の復路を辿らなくて良くなりそう。

「ありがとうございます」

「私は、王太子様に頼まれた仕事をしただけだからね……お嬢さんも、悔いのない決断をするんだよ」

 こんな深い森に孤独に暮らす、美しい魔女。それは、色々と入り組んだ事情があるとは私にも察する事が出来る。グウィネスは、しっかりと握手をしてくれた。そして、すぐに吸い込まれるような感覚がして、私は森の入り口に立っていた。

 一瞬の内に変わった視界に慣れようと目を何回か瞬いている間に、すぐに移動して来たクレメントが隣に立った。

「……手を」

 私は差し出された大きな手を躊躇う事なく掴み、ほっと大きく息をついた。

 これで、私の気持ちや何もかもを失くしてしまっていたランスロットを、元に戻すことが出来ると安心したから。