クレメントは、あの庭園であっさりと私に別れを告げ去って行ってしまった。あの時のみじめな気持ちを思い出す度に、どうしようもない切ない気持ちにはなる。

 たった一人に別れを告げられただけだと言うのに、まるで世界から味方がいなくなってしまうような……ぽっかりと胸に大きな黒い穴が空いているような気持ちを、彼は……一度でも味わったことがあるのだろうか。


◇◆◇


 そして身綺麗にした私たち二人が重い沈黙を守り、物で溢れている居間に座って待つこと数時間。グウィネスから渡された薬は、小さな小瓶に入っていた。それはとても美味しくなさそうな、毒々しい暗い紫色をしている。

「あの……私が来た理由って……」

 文字通り、ここに来ただけの気がするけどと首を傾げれば、グウィネスは苦笑した。

「ああ。お嬢さんを知っていることが、この薬を作る術者……つまり、私に必要だっただけだから。よかったね。早く飲ませてやんな。この森で移動魔法を使えないのは、私が術をかけているからでね。入り口までは、私が魔法で送ろう。それからは、騎士さんの魔法でいけるだろう?」