「どう……ですか?」

 気の短いクレメントが、私の疑問をグウィネスに聞いてくれた。咄嗟に敬語が出てこなかったのも、彼らしいと言えば彼らしい。

「良いね。採れ立てで新鮮だし。今から薬を調合する用意するから、二人とも風呂に入って着替えでもしていたらどうだい。一応ボールドウィンさんには、着替えを用意していたんだが。そちらの女の子にも必要になるとは、思わなかったねぇ」

「ご迷惑をおかけして、すみません」

 私がぺこりと頭を下げると、グウィネスは微妙な表情になった。

「……この国の上流階級のご令嬢は、皆こんな感じなのかい? 調子が狂うねぇ」

「ディアーヌは……彼女は貴賤結婚の縁戚を持つので、身分に関しては普通の令嬢のように余り気にしません」

 クレメントは私の事情を、サラッとグウィネスに説明した。確かに私の父の弟で大好きなエリック叔父様は、大恋愛の末に貴族の身分を持ちつつ平民の叔母様と結婚した。優しくて美しくて、私は良く懐いている。

 エリック叔父様は複数の爵位を持っていたお祖父様の跡を継ぎ、現在はハクスリー男爵でもある。

 そうした意味で、私は余り血統主義に拘りを持ってはいないのかもしれない。

「はー……流石は、元彼だねぇ。彼女の詳しい事情に、精通していること。育ちの良いお嬢さん。余り綺麗な浴室とは言えないが、身体中そうして黒い泥で汚れているよりマシだろう。すぐにお風呂に入っておいで」

 いかにも私達二人の事情を面白がっていた様子のグウィネスはそう言って、私を物が溢れる家の中へと案内してくれた。