「そうだけど……もう、良いから。離して。色々と連続したから、驚いただけなの」

 間近に迫ったクレメントの顔は、物言いたげだ。整った凛々しい顔立ち。それが好きで好きで、堪らなかったこともあった。今はもう、何もかもが過去の話だけど。

「な……やっぱり」

「嫌。言ったでしょう。もう、騙されないって」

 私が腕をつっぱらせて強めにそう言い切ると、彼は眉根を寄せて大きく息をついた。

「……悪かった」

 それは、熱くなりやすい彼なりに、色んな意味を含んでいた謝罪なのかもしれないとは思った。

 もし、それが気になるなら、追求する事は容易いだろう。彼が何か言いたそうなのは、良く分かった。でも、私はそれに気がつかない振りをした。

 だって。私たち、もう別れているから。他人だし。


◇◆◇


「はー……えらい格好になったね」

 扉を開けたグウィネスは、泥だらけになっている私とクレメントを見て苦笑した。彼女はクレメントに無言で渡された紫色の薬草を、矯めつ眇めつ。私は訳もなく、落ち着かない気分にはなった。

 それで良いのか悪いのか、どうなのか。早く、結論を教えて欲しい。