「商品開発部冷凍食品・冷凍餃子担当チームの皆さん。おめでとうございます、上期の社長賞に相応しい成果を上げていただきました」
 
 そう言ってマイクを取ったのは、我が株式会社アクロス・テーブル社長、朝比奈(あさひな)慶一(けいいち)。まだ四十代後半の彼は、たった一代でこの会社を大きくした有能な経営者だ。あまりお目にかかる機会は無いが、社員の声をよく聴いてくれるという、なかなか人間味のある方だという話は耳にしたことがある。
 
「冷凍餃子という既存商品に、新しい発想で果敢にチャレンジしていただきました。その結果、予想を大きく超える売り上げと反響を獲得し、今後間違いなく我が社の看板商品の一つになると期待しています」
 
 社長の言葉があんまり入ってこないのは、多分私だけじゃないだろう。壇上にいる他の三人も、会場にいる大勢の社員も。みんなポカンとしている。
 ナベさんが代表して賞状とトロフィーを受け取り、その後写真撮影までされた。一人ずつコメントとか求められなかったのは幸いだった。
 壇上からようやく解放され、元いた場所へ戻る。どういうことかよくわからないけれど、社長賞受賞の取り消しは取り消されたようだった。