結局、土日は何もしないまま時間が過ぎていった。退職願は途中まで書きかけたものの、梨紗の怨念のような声がよみがえってくる度、ペンを持つ手が止まった。
 
 九月一日月曜日。そういえば、「来月には十九になる」と言ってたっけ……と圭人を思い出す。誕生日くらい、聞いておけば良かった。聞いたところで、もう会うこともないし、お祝いすることもできないけど。
 会社からはその後、何の連絡も無かった。ただ、梨紗からは一言、「定例会、出てきなさいよ」とだけメールが来ており、一応まだ退職していない身としては行かざるをえない。無断欠勤になるからだ。
 それでもやっぱり、行くべきかどうか悩む。私のせいで表彰されなくなったチームのメンバーに、一体どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。それに、社内に広がった自分の噂に耐えられるほどのメンタルは、正直今は持ち合わせていない。
 
 重たいため息をつきながら、スーツに着替える。
 着替えをする私を覗き見ようと、いつも圭人がニマニマしながらふざけて近寄ってきたことをふいに思い出し、可笑しくて泣きそうになった。圭人のことを思い出すと、どうも涙腺が弱くなるらしい。困ったものだ。
 
 結局家を出る直前まで、私は行くべきなのか悩みに悩んだのだった。