「モエモエ先輩っ、お昼ご一緒しましょー♪」
 昼休憩の為、白衣を脱いでハンガーに掛けているとヤッシーに誘われた。初めこそその距離感の詰め方に驚かされたものの、もう慣れてしまった。

 社内のカフェテリアではなく、ヤッシーは近くの定食屋に私を誘った。
「なんか、昼休憩くらい会社から離れたいんだよねー」
 生姜焼き定食を前に、ヤッシーはしみじみと言う。
「ほら、あたしこんな見た目だから目立つっしょ? 商品開発の人たちは寛容だけどさ、やっぱそうじゃない人の方が多いし」
「ああ、確かにね……」
 私だって、初めてヤッシーを見た時はさすがに驚いた。でも話してみると彼女は至って真面目で、愛嬌のあるいい子だ。
 焼き魚定食に口をつけていると、唐突にヤッシーが質問した。
「ねねっ、モエモエ先輩がうちに来たのって、パワハラが原因だってマジ?」
 ぐさっ! いくらなんでもストレートすぎる……。
「……マジ、です」
 会社的にはそういうことになっているのは事実だ。
「モエモエ先輩って全然そういうことするタイプに見えないんだけど。何があったの?」
「ヤッシー……。あんまり傷をえぐらないで……」
「え? あっ、ごめぇん! でもさ、あたしに話したらちょっと気が晴れるかもよ?」