「なっ……、デタラメです!」
ビアンカは、顔色を変えた。言うに事欠いて……。だがそこへ、聞き覚えのある声がした。
「ああら。図々しくも、晩餐会に殿下のカラーをまとって現れたのは、どなただったかしら?」
追従笑いを浮かべながら、カルロッタの隣に寄り添ったのは、レオーネ夫人だった。
「おまけに武芸試合では、ちゃっかり殿下のお隣に座らせていただいて……。ちょっと構われたくらいで、愚かにも夢を見てしまったのねえ。でも相手にされないから、仕返ししようと思いつめたのでしょう」
またあなたですか、とビアンカはため息をつきたくなった。だがそこで、ビアンカはふと気付いた。こちらを見るカルロッタの眼差しに、激しい憎悪が宿っていたのだ。レオーネ夫人に恨まれるのはわかるが、国王の愛人に憎まれる心当たりはない。そもそも、今回はもちろん、前回の人生でも、彼女と関わる機会などなかったのだ。
(なぜ……?)
「事実無根でございます。そのような大それたことも、罰当たりなことも考えたことはございません」
憤りを隠して、ビアンカは冷静に答えた。ゴドフレードが、苛立たしげに言う。
「カルロッタ殿。そなたの主張は、全て想像の域だろう。確たる証拠もない状況で、罰するなど……」
「ゴドフレード殿下」
カルロッタは、びしりとゴドフレードの言葉を遮った。不遜な目つきで、彼をにらみつけている。
「今回の件、コンスタンティーノ三世陛下の命ということを、お忘れかしら? そして陛下が、決定権を私に委ねられたことを……。いくら王太子殿下といえども、今あなたが、私にご意見なさる権限はなくてよ?」
ゴドフレードが、苦虫を噛みつぶしたような顔で黙り込む。ビアンカは、絶望的な気分になった。
(そうだったの……?)
「処分は、おって下す。この娘を、牢へ入れるように」
高慢な口調で言い捨てると、カルロッタはくるりと踵を返したのだった。
ビアンカは、顔色を変えた。言うに事欠いて……。だがそこへ、聞き覚えのある声がした。
「ああら。図々しくも、晩餐会に殿下のカラーをまとって現れたのは、どなただったかしら?」
追従笑いを浮かべながら、カルロッタの隣に寄り添ったのは、レオーネ夫人だった。
「おまけに武芸試合では、ちゃっかり殿下のお隣に座らせていただいて……。ちょっと構われたくらいで、愚かにも夢を見てしまったのねえ。でも相手にされないから、仕返ししようと思いつめたのでしょう」
またあなたですか、とビアンカはため息をつきたくなった。だがそこで、ビアンカはふと気付いた。こちらを見るカルロッタの眼差しに、激しい憎悪が宿っていたのだ。レオーネ夫人に恨まれるのはわかるが、国王の愛人に憎まれる心当たりはない。そもそも、今回はもちろん、前回の人生でも、彼女と関わる機会などなかったのだ。
(なぜ……?)
「事実無根でございます。そのような大それたことも、罰当たりなことも考えたことはございません」
憤りを隠して、ビアンカは冷静に答えた。ゴドフレードが、苛立たしげに言う。
「カルロッタ殿。そなたの主張は、全て想像の域だろう。確たる証拠もない状況で、罰するなど……」
「ゴドフレード殿下」
カルロッタは、びしりとゴドフレードの言葉を遮った。不遜な目つきで、彼をにらみつけている。
「今回の件、コンスタンティーノ三世陛下の命ということを、お忘れかしら? そして陛下が、決定権を私に委ねられたことを……。いくら王太子殿下といえども、今あなたが、私にご意見なさる権限はなくてよ?」
ゴドフレードが、苦虫を噛みつぶしたような顔で黙り込む。ビアンカは、絶望的な気分になった。
(そうだったの……?)
「処分は、おって下す。この娘を、牢へ入れるように」
高慢な口調で言い捨てると、カルロッタはくるりと踵を返したのだった。