「わっ、わたし…っ、いろいろ分かってなくてっ、ちょっとだけ怖くて…!」
「ばかやろ」
「えっ、」
結多くんは、楽しいひと。
男の子からも女の子からも人気、クラスの人気者。
そんなところに惹かれた私は、初めて彼から「ばかやろう」と言われてしまった……。
「……優しくするに決まってる。大丈夫、夏休みの課題に対する勤勉な俺はすべてそっちに注いだから」
「…それは、それで、」
「うん。それはそれですげーよな」
自分でも思うわ、と。
ちょっとだけ冷静に笑った結多くんは見下ろしてくる。
「はあ……、この世にはあるんだよ、語彙力を失う可愛さってのが。まじかわいい、どう表したらいいのこれ、もう天使以上だから……ヴィーナス?わっかんね、
もうこのみちゃんさえ居れば俺の世界は回るってのは教科書に載るべき真実、」
「……アホだよ結多くん」
「知ってる」
エアコンの風、置かれた時計のカチカチ音。
外をバイクが通ったエンジン音。
ベッドのうえにて、なにかが始まろうとしている高校生がふたり。



