彼_____柳本 璃玖くん、男女問わず"りっくん"と呼ばれる、通称王子。
いつもクラスの中心で誰からも好かれていて、委員長まで務めていて、容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群と非の打ちどころのない彼は_______紛れもなく、私の"推し"である。
恋愛対象ではなく、観察対象。
見ているだけで幸せ。生きててくれることに感謝。
本日も推しの顔は強い。顔面のキラキラさで土に還らされそう。
「蓮見、何か違う世界行ってない?それより早く教室行かないとそろそろチャイム_____」
目の前にいらっしゃる推しに想いを馳せているとすぐに時間を忘れてしまう。
りっくんが口に出した時にはもう遅く、無情にも無機質なチャイムの音が校舎内に鳴り響く。
こっちの世界に戻ってきた私は一瞬遅れてハッとして、りっくんと目を合わせた。
……うん、大丈夫。思うことは同じ。
私たち遅刻魔の合言葉は、『チャイムが鳴り終わるまではセーフ_________』



