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「で、キスできた?」

「……え、」


放課後、月に一回招集される委員会の帰り道。隣を歩く茶髪くんが不意に口を開いたと思えば、拾った言葉は突拍子もないものだった。


「なに、彼氏でもない男にキスしたいって言われて悩んでたんじゃねーの」

「な……っ!だ、だからそれはたとえばの話!」


この間の質問をすっかり私の本物の悩みだと思っているから慌てて訂正した。

まあ、間違いではないけど!けどなんとなく、これが私自身の悩みですっていうのはちょっぴり恥ずかしいし、相手がりっくんです、なんて自意識過剰だと笑われそうだし。


「ふーん、別に俺はどーでもいいけど」

「うん、もうお気になさらず……って、あ」


昇降口まで歩いてきて、ハッとした。最悪だ、蓮見汐架、最大級のやらかしかもしれない。


「雨降るなんて聞いてない……っ!」


外の景色が視界に映る。朝はカラッと晴れていた空間が、ざあざあと雨を降らしてアスファルトを濡らしていた。