「……花霞」

 聖と付き合い初めてしばらくして、綾浜先生は、また私の前に現れたーーー。

 ーーーえ?

「先、生……?」

 え、なんで……? なんで先生が、ここに?

「ちょっといいか?」

「……なんですか?」

 先生のことは、私の中ではもう忘れたはずだった。 先生のことを忘れて、聖との人生を歩み始めていた。
 どうしてまた……私の前に現れたの?

「ちょっといいか?話したいことがあるんだ」

「……話したいこと?」

 先生の話したいことって、何……? 全然、想像が付かない。

「おまえ……なんで俺を避けるんだ?」

 ……違う、避けてなんてない。 避けてる訳じゃない。

「別に、避けてません」

「避けてるよな?……あの日のバスでの告白以来、俺を遠ざけてるように見える」

 遠ざけてる? そんなことない……。

「それは……先生の勘違いです」

「俺あの日の返事、まだしてなかったよな」

「……え?」

 いや、あれは……冗談だって言ったのに。 まさか先生、本気で信じたの?
 
「あれは、冗談だって言いましたよね?」

「冗談だったなんて、俺は信じてない」

 信じない?……何言ってるの?

「あれは本気の言葉だったんだろ?」