聖は……ずるい。ずるいって……。

「花霞……」

「聖……っ」 

 土砂降りの雨の中、私たちは傘もささずに濡れた服のことなんて気にすることもなく、お互いに見つめ合う。

「……花霞、俺はおまえが好きだ」

「ひ、じり……」 

 そして私はゆっくりと目を閉じ、そのまま引かれ合うように聖とキスをしたーーー。

 その時私は、先生のことをもう忘れよう。本気でそう思った。
 聖と一緒に、このまま生きていこうって……そう思ったんだ。

「花霞、俺と付き合ってほしい」

「……うん」

 そう、私は聖と幸せになるべきなんだ。 昔の恋にずっと囚われても、仕方ないから。
 私は今目の前にある、この幸せを掴むべきなんだ。……聖との幸せを、考えるべきなの。

 これが私の、選ぶ道ーーー。




✱ ✱ ✱


 聖と付き合ってから三ヶ月が過ぎ、私と聖は順調に交際を続けていた。
 あれから先生とも会うけど、前よりも話さなくなった。 先生とは、もう完全に終わった。

 好きな人との恋を終わらせられたら、幸せが待ってると思った。
 だから私は、聖と付き合うことを決めた。

「花霞、頑張れよ」

「うん。……聖もね」
 
「おう。じゃあ、また連絡する」

「うん」

 幸せに、なるためにーーー。