私って……最低だったんだな。 先生にも悪いし、聖にも悪いことをした。
 私には……恋をする資格なんてない。誰かを思うことなんて、してはイケなかった。

「……ごめん、聖」

 私は聖の顔が見れなくて、その場から逃げるように歩き出す。
 なのにーーー。

「待てよ、花霞……!」

 聖はこんな大雨の中、私を後ろから思い切り抱きしめてきたーーー。
 そのせいで、ふたりの傘は道路に落ちていく。

「……え? ひじ、り?」

 なんで?なんで……。

「……俺にしとけよ、花霞」

「えっ……?」

 私は雨に打たれながら、そのまま立ち尽くす。

「俺なら、おまえを悲しませたりしない。……絶対に、悲しませたりしないのに」

 その言葉と聖の体温が妙に心地よくて、私は聖の方へと振り返る。

「聖、私……」

「俺じゃ、その人の代わりにはなれないか?」

 そんな真剣に見つめられたら、私は何も言えなくなる。

「……聖は、優しいから……。私は、その優しさにいつも甘えちゃうよ……」

 どんな時でも、やっぱりそばにいてくれるのは聖なんだ。
 こうやって慰めてくれるのも、聖だけーーー。

「とことん甘えてほしいよ、俺は」

「……っ」