そう思っていた、そんな時だったーーー。




「きゃっ!?」

 帰る途中、駅の構内で誰かとぶつかってしまった。

「す、すみません!」

 ぶつかってしまったことで、私のカバンの中身が飛び散ってしまった。

「こちらこそ、すみません。おケガはないですか?」

「は、はい。大丈夫です」

「すみません。 これ、どうぞ」 

「あ、ありがとうございます」

 カバンの中身を拾い上げ、ふと顔を上げると……。

「……え?」

 どこか見覚えのある顔が、私の目の前に座っている。
 それは忘れもしない、あの時好きだった人の顔だった……。

「……もしかして、綾浜先生?」

「……もしかして、花霞か?」

 やっぱりそうだ。この声は、綾浜先生……。

「本当に……綾浜先生?」

「そうだ。……って言っても、もう先生じゃないんだけどな」

 え……? もう先生じゃない?

「それより、こんなとこで会うなんて奇遇だな。びっくりしたよ」

「私も、びっくりしました。 まさか、先生とまた会えるなんて……」

 こんなこと、あるんだね……。またこうして会えるなんて、思ってもなかった。

「元気だったか?」

「はい。……先生は?」