「聖、コンサル、ありがとうね」

 聖はそんな私の頭を、ぽんと優しく撫でる。

「あんま無理すんなよ、花霞」

「聖もね」

 聖は私のことを心配してくれる。研修医時代、何かと助けてくれたり、慰めてくれたのは、聖だった。

「……あのさ、花霞」

「ん……?」

「今度、俺とデートしない?」

 聖のその言葉に驚き、左手に持っていたココアの缶を落としてしまった。

「えっ……。デート……?」

「そう。俺とふたりで」

 ふたりで……? 聖と、ふたりで?

「たまには気晴らしも必要だろ?俺もそうだし。 だから、俺とデートしない?」

「……それ、本気で言ってる?」

「俺はいつだって、本気だけど」

 聖がなんとなく、私のことを好きなんじゃないかって思ってはいた。
 でも、どこかで違うかもしれないとも思った。

「……前向きに、考えとく」

「おまえらしいな。 いい返事待ってるよ」 

 聖はコーヒーの缶をゴミ箱に投げ入れると、そのまま私の前から立ち去っていく。

「俺はいつだって、本気だけど」

 その言葉を聞いて、なぜか心が揺れる気がした。

「聖……と?」

 考えたことはない。 でも、悪くないかも……しれない。