「挿管した」

「先生、バイタル低下してます」

「呼吸まだ弱いですね。もしかしたら、肺が潰れてるかも……。エコーしましょう」

「すぐ準備します」

 先生のエールのおかげで、今もこうして医者を続けられている。 まだ研修医だった頃、何度も挫折して辞めようと思ったことがたくさんあった。
 それでも続けられたのは、先生のあの言葉があったからだ。

【おまえはどんな時も諦めない心を持ってる。だから、躓いても決して諦めるな。 そうすれば、道は開ける】

 先生に言われた言葉を思い出す度に、あの頃の好きだった頃の先生のことを思い出す。

 先生の笑顔、先生の仕草、先生の話し方まで。……全部、覚えてる。

「やっぱり肺が潰れてますね……」

「外科の先生にコンサルしますか?」

「そうですね。 この時間なら他分、聖(ひじり)先生がいるはず」

 内科医でも外科医でもなく、救命を選んだ。その理由は、救命の方がスキルを上げられると思ったから。
 同期の聖(ひじり)は、外科医になりたくて医者になったと言っていた。

 聖とは仲がいいし、なんでも話せる仲ではあるけど、それ以上の関係にはなれない。
 聖と私は、全然違うから。