「……私なんて、まだまだです」
「え?」
私はお箸を置くと、先生に視線を向ける。
「私はまだ、立派な医者になれたのか分かりません。 でも……誰よりもたくさんの人を助けたいと、そう思っています」
医者になることを諦めずに頑張れたのは、先生の言葉があったからだから。
「花霞は立派に医者をやってると、思うけどな」
「……え?」
優しい先生は、そうやって優しい言葉をくれる。
「あの時、俺をすぐに処置してくれただろ? 手際も良くて、カッコ良かったぞ」
「……ありがとう、先生」
先生にそう言ってもらえると、なんだか元気がもらえる気がした。
「あの頃の花霞とは全く違ってたっていうか……花霞がすごく輝いて見えたよ、俺には」
先生にそう言われると、医者になった自分を褒めてもいいのかな?って、そう思えた。
「……ねえ、先生」
「ん? ってか、もう先生じゃないから、その呼び方はやめないか?」
先生は水を飲みながら、私に視線を向ける。
「でも、先生は先生でしょ?」
私の中で、先生はずっと先生だから。 いつまで経っても、先生なんだから。
大好きだったあの頃のまま、何も変わらない先生のまま。



