「染みますねえ」

「染みるな」

 先生とラーメンを食べるだけで、こんなにも幸せだなんて……。

「先生、先生はもう……教師には戻らないの?」

「戻るか……。それはないな」

 教師に戻ることはない……。そっか、そうなんだ。

「そっか、ないんだ」

 そう呟いた私の声に耳を傾けることなく、先生はひたすらラーメンを食べ続ける。

「そういや花霞は、医者になってもう何年になるんだ?」

 ラーメンを食べ終えた先生が、私にそう問いかける。

「もう四年になります。……医者になって、四年目」

 この四年、たくさん努力してきた。たくさんの患者を救えるように、少しでもスキルを上げられるように。

「そっか、四年か。……あっという間だな」

「そうですね。あっという間です」

 医者になって四年、色んな苦労もした。けれど辛いことばかりじゃなかった。
 嬉しいこともあったから、ここまで頑張ってこれた。

「……花霞は、なったんだな」

 そのことに「え?」と先生に視線を向ける。

「立派な医者に、なったんだな」

 立派な、医者……。本当にそうなのだろうか?

 まだ私には、それすらも分からない。立派な医者に、なれたのか。