先生は私にそう話した。

「私もです。当直でさっきまで寝てしまってて、お腹空いてて」

 先生は「じゃあ、何か食べるか。俺がおごるよ」と言ってくる。

「え?」

「この前のお礼を兼ねてさ」

 この前のお礼……?

「あ、あれは仕事ですから、お気になさらず!」
 
 この前の処置のことを言ってるなら、気にすることなんてないのに。

「聞きました。 あの後、よくなったみたいで良かったですね」

「ああ、花霞たちとのおかげだよ。助かった」

 そもそもなんで、緊急搬送されたんだろう?

「しばらく経過を見たいからって、脳神経外科に通うことになったよ」

「そうなんですか」

 でもこれで少しでも偏頭痛がよくなれば、いいんだけどね。

「薬も出してもらったし、しばらくは持ちそうだよ」

「良かったですね」

 本当に良かった。先生がまた元気になって。

「立ち話もなんだし、どこか店入ろうか」

「はい」

「何か食べたいものはあるか?」

 食べたいもの……。そうだな?

 お店を見回してみて、視界に入ったのは、ラーメン屋だった。

「じゃあ、ラーメンにしませんか?」

「ラーメンでいいのか?」

「はい。ラーメンがいいです」