「花霞、その人と知り合い?」

 杏奈が先生の採血をしながら、私に問いかける。

「高校の時の担任の先生」

「え、担任? そうなの?」

「うん。三年間、担任だった先生」

 まさか医者になって、先生を処置することになるとは、思わなかったな……。

「へえ〜。こんなことあるんだねえ」

 私も、本当にそう思うよ。

「本当にね」

 頭痛がするということで、痛み止めを入れていく。

「先生、痛みは結構強いですか?」

「……そうだな、結構強いかも」

「痛み止め入れていきますね」

 痛み止めを入れ、様子を見る。

「念の為、体温測らせてください」

「……ああ」
 
 先生のおでこに体温計を当てる。すぐにピピッと体温計が鳴る。

「36.2分ですか……。熱はなさそうですね」

 熱は平熱って所かな?

「先生、頭が痛いのがいつからですか?」

「一時間くらい前……かな」

 一時間くらい前……。

「先生、偏頭痛とかありますか?」

「偏頭痛……たまにあるんだ」

 偏頭痛持ちだったんだ、先生……。高校の時は知らなかったことを、六年が経って今初めて知った。

「そうですか……」

 気圧の変化とかも関係してるだろうか?