イケメンで、ハイスペック……。まあ、確かに。

「応援してるよ、花霞」

「……はいはい」

 応援、ね……。

 でも私には……私の中には、たまに先生がいるんだ。 六年経った今でも、たまに思いだす。

「花霞? どうかした?」

「あ、ううん」

 いけない。仕事に集中しなきゃ。

「今日花霞、当直だよね?」

「うん」

「それはお疲れ」 

 その時、医局のホットラインが鳴り響いた。

「行こう、杏奈。もうすぐ救急車来るよ」

「了解」

 こうして私は、仕事を始める。

「ストレッチャー入ります!」

「こちらにお願いします」

 そして運ばれてきた患者さんを見て、私は心底驚くことになった。

「三十代男性、頭の痛みを訴えています」

「頭の痛みですね。分かりました」

 処置を始めようとしたその時……。

「えっ、綾浜、先生!?」
 
 運ばれてきたのは、綾浜先生だった。

「……花霞、か?」

「先生、大丈夫ですか?」
 
 なんで先生がここに!?

「ああ……なんとかな」

「先生、採血させてください。後、痛み止め入れますね」

「……ああ、頼む」

 まさか先生が、運ばれてくるなんて……。