六年前、高校三年の春ーーー。




「綾浜(あやはま)先生」

「花霞(かすみ)、卒業おめでとう」

 花束を手に持つ私に、綾浜先生は嬉しそうに笑っている。
 
「先生……三年間、ありがとうございました。お世話に、なりました」

 六年前の今日、私は高校を無事に卒業した。

「花霞、これからも頑張れよ」

「……ありがとう、先生」

 私は綾浜先生のことが好きだった、ずっと。……三年間、先生に恋してた。
 でもその気持ちを伝えられぬまま、今日と言う日を迎えてしまった。

「……先生?」

「ん?」

「私、先生が担任で良かった」

 綾浜先生のことが好きだった。 でも、この気持ちにはフタをするしかなかった。

「先生も、花霞が俺の生徒で良かったよ」

「……ありがとう、先生」


 まさかこの時は、先生と再会するなんて思ってもなかった。
 そしてあの日から私は……また、先生に恋をするなんて。 あの頃の好きな気持ちが、今になって溢れてしまうなんて、思ってもなかった。
 
 ねえ先生……私、先生のことが好きなんだ。 だから後悔、したくないの。
 先生……私は心まで、あなたに愛されたい。ずっと、愛してほしい。 そう思ってた。