結婚してすぐ、私達はセックスレスになった。
『……健太郎、起きてる?』
時計の針は深夜0時を指している。
さすがに義母も眠っただろう。
頃合いを見計らって体を起こして、隣のシングルベッドで横になる健太郎そっと声をかける。
『ん?なに』
真っ暗な部屋の中でスマホをいじっている。
画面が健太郎の顔を照らしている。でも、声をかけても視線はスマホ画面に向いたままだ。
今日が排卵日であることは生理周期から予想がついていた。
『ねぇ、今日……どうかな?』
『どうって、何が?』
『だから……そっち、いってもいいかな?』
心臓が口から出そうなほど緊張していた。
男性経験は健太郎以外にない。
健太郎と初めて結ばれた日、私に経験がないと知ると、健太郎は驚きながらも喜んでくれた。
その日からは健太郎がしたいというタイミングで応じていたし、レスになるなんて思ってもみなかった。
でも、結婚してから健太郎は私に一切触れようとしない。
このままではいけない。
お義母さんにも子供はまだかと急かされているし、自分から歩み寄らないと。
勇気を出して健太郎のベッドに潜り込んだ瞬間、スマホの画面をオフにして健太郎は私に背中を向けた。
『健太郎……』
そっと背中に手を伸ばすと『なんだよ』とため息交じりにその手を振り払われる。
まるで私の行為を迷惑だという様に体を離して無言のまま深いため息を吐く。
私は喉元まででかかった『しよう』という言葉を今日もまた飲み込んで自分のベッドに戻った。