「健太郎も子供欲しいって言ってたんだけどなかなかできないのよねぇ」
義母の言葉に私は目を見開いた。
「えっ、健太郎……本当にそんなことを言っていたんですか?」
「言ってたわよ。あの子って昔から子供が好きだもの。優花さんも真剣に考えなさいよ?」
「すみません……」
謝りながら両手をきつく握り締める。
私はいつだって真剣に考えている。
考えていないのは、健太郎のほうなのに……。
「じゃあ、私、上に行きますね。ごゆっくり」
冷蔵庫に買ってきた食材を手当たり次第に詰め込み、私は逃げるようにリビングを飛び出した。
夫婦の寝室に入り、扇風機を回しその前に座り込む。
長い前髪がユラユラと揺れる。
「……私達に子供なんてできるわけないのに」
私は膝を抱えてその間に顔を埋めてポツリと呟いた。