「で、優花はどうしようと思ってんの?このままずっと旦那が好き勝手やってるのを見て見ぬふり?」
「それは……」
フォークを置くと、私は考えを巡らせた。
私は一体どうしたいんだろう。どうすることを望んでいるんだろう……。
「ごめんごめん。優花を責めてるわけじゃなくて。答えを急ごうとするのあたしの悪い癖だね」
薫はそう言うと、「あのさ」と言葉を続けた。
「大学卒業後、就職して仕事も軌道に乗ってきた頃にあたし、達也と付き合い始めたじゃん?覚えてる?」
薫の言葉に頷く。
薫は大学卒業後、倍率の高い大手広告代理店に入社してバリキャリとなった。
でも、それから2年後達也という売れないバンドマンと出会い恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚。翌年には亜子ちゃんを産んだ。
「達也ってさ、結婚してからも全然働かないし、金はせびるしホント男としてどうしようもない奴だったんだよ」
「薫も苦労したんだね」
「まあお金に関してはね。でも、私はそれを承知で達也と結婚したの。アイツが好きだったから。他の女に取られたくないって思うぐらいアイツは魅力的だったし、いいとこもいっぱいあったから」
ハイスペックな薫にそこまで言わしめるなんて達也、恐るべし。
「でもね、妊娠中の浮気だけはどうしても許せなかったから、三下り半ついたの。どんなに泣いて謝られても許そうって気になれなかったんだ。百年の恋も一時に冷めるってやつよ」
「そっか……」
「離婚するって決めて周りに報告したら、非難の嵐よ。『結婚なんて早かったんだ』とか『あんなどうしようもない男選んだお前が悪い』とか『ほら、いわんこっちゃない』ってさ。結婚前よりも酷い言われようだったってわけ」
一度言葉を切りアイスコーヒーを勢いよく吸い込むと、薫は真っ直ぐ私を見つめた。