残された方がどんな気持ちになるかなんて考えてもいない。
いや、むしろそこまで考えが回るような人は不倫なんてしない。
「旦那が不倫相手に会うのを分かってて気持ちよく送り出せるわけないじゃない」
呟いた声は惨めに震えていた。
『さっきの電話、女でしょ!?全部聞いてたんだから!』
とあえて健太郎を追い詰めなかったのは、泳がせるため。
もし私が不倫に気付けば、健太郎は証拠を隠滅して何事もなかったかのように振舞うだろう。
……そうはさせない。
結局、この日健太郎は帰ってこなかった。