目を覚ますとすぐ、私はパジャマから私服に着替えて朝食を作る。
それを済ますと、南側のプランターの前で腰を落としてじっとミニトマトの観察をした。
瀬戸さんとの約束から二週間が経った。今か今かと待ち望んだプランターのミニトマトは赤く染まった。
これならいつでも収穫できる。
毎日水やりや葉っぱの手入れを欠かさずに行い育てたかいあって、大きさも均等でつるりと綺麗なミニトマトができた。
今日は土曜日だから、週明けの月曜日の昼間にでも瀬戸さんの家におすそ分けしにいこう。
直前に収穫して新鮮なトマトを渡したら、きっと喜んでくれるに違いない。
7時になると、パジャマ姿の健太郎が大きなあくびをしながらダイニングテーブルの椅子に腰かけた。
「新聞」
「……はい」
「今日はアイスコーヒー」
「分かった」
眠そうに目を擦る健太郎の前に指示された新聞やアイスコーヒーを並べる。
白いプレートに焼いた食パンとスクランブルエッグ、カリカリのベーコンを運ぶと、健太郎は眉を寄せた。
「ご飯がいいんだけど。米ないの?」
「冷凍ご飯ならあるよ」
「また冷凍ご飯かよ。何で働いてる俺が冷凍ご飯食べさせられないといけないわけ?なんかの嫌がらせ?」
「そうじゃないけど、この間朝ごはんはパンが良いって言ってたでしょ?」
「だからって毎度毎度パン用意するなよ。つーか、作り置きなのもどうかと思うんだけど。俺が起きてきてから何が食べたいか聞けよ。それから作ればいいじゃん」
「……朝食が出来てないと健太郎怒るでしょ?」
「ハァ?俺がいつ怒ったんだよ。言ってみろよ」
バンッとテーブルを手のひらで叩く健太郎にビクッと肩を震わせる。
先月も今日と同じやりとりをした。
朝起きてから食べたい物を聞いて作ると決めたはずなのに、『朝食ができてないなんてありえない!』と健太郎は私を叱責した。