7月。
「あっつい」
部屋の中は湿度が高くて蒸し暑い。
全身から汗が噴き出してきて、首に巻いたタオルで垂れてくる汗を拭う。
今年の夏は記録的な暑さだ。
まだ朝の8時だというのに室内の温度計は30度に届きそう。
なかなか起きずに寝坊した夫の健太郎を車で20分かけて駅まで送り、家に帰り家族3人分の洗濯物を干し終えた頃には暑さでへとへとになっていた。
今日は忙しい。
9時の開店時刻になったら近くのスーパーに行ってトイレットペーパーを買いにいかなくてはならない。
今朝の広告はすでにチャック済みだ。普段はドラッグストアで買うものの、今日はスーパーの値段が底値だ。トイレットペーパーを買うついでに今週分の食料品も買っておこう。
スーパーの一角にはATMもあるし、車で15分の銀行までお金をおろしに行く必要もない。
一石二鳥ではなく、一石三鳥だ。
化粧水と日焼け止めを塗りたくって部屋を出て築三十年の木造住宅の急な階段を下りると、リビングから義母の花子が顔を覗かせた。
「ちょっと、優花さん!トイレットペーパーが切れそうなんだけど」
「すみません、うっかりしてて。これから買いに行ってきます」
わずかに開いたリビングの扉の隙間から冷風が体にぶつかる。
20度設定にしてあるせいで部屋の中は快適を通り越して鳥肌が立ってしまいそうなほどキンキンに冷えている。その中でカーディガンを羽織っている義母に呆れる。