みんなのいう『幸せ』というものがなにか、35歳になった今も分からずにいる。
『いい旦那と結婚して専業主婦になれるなんて羨ましい!あたしも早くいい人見つけて仕事辞めたいです』
結婚を機に、大学を卒業してから長らく勤めた病院の受付事務を退職した。
送別会のとき、後輩は羨ましそうに言った。
『優花さんは幸せ者ですね』
祝福されてもピンっと来なかった。
みんなが言うように私は『幸せ』というものを手に入れたんだろうか?
子供のころから私は『幸せ』がなにか分からずにいる。
だからずっと、漠然と『幸せ』を追い求めてきた。
周りのみんなは結婚をゴールだという。
だから、結婚をした。
結婚後は漠然とこう考えていた。
子供を産んで、育てて……そうして固い絆で結ばれる夫婦になる。
そうすればきっと私は『幸せ』を手に入れることができる。

――はずだった。