(琉衣くんは)極甘な国に閉じこめたい



「遠慮しないで、家の中にどうぞ」


言われるまま
玄関に足を踏み入れる。


「安心して。僕の家族は
 夜にならないと帰ってこないから」


それはそれで、安心できない気が。

靴を脱ごうとして
私は動きを止めた。


「それって、妹の芽衣ちゃんも
 いないってこと?」


「芽衣は今日、ピアノと生け花と
 日本舞踊のレッスンを
 はしごしなきゃいけない日だからね」


ひぃえ?

凡人の(わく)をつき破る
習い事のチョイス。

芽衣ちゃんって生粋のお嬢様?


ということは……

「琉衣くんも
 習い事をしてたりするの?」


「僕は2つだけ。
 経営学とバイオリン」


経営学とバイオリン?


「父の会社を、僕が継ぎたいからね」


志が高すぎ。
私には、まぶしすぎるよ。
 

「バイオリンは趣味。
 楽しくてたまらないから
 続けさせてもらってるんだ」


やはり琉衣くんも
上流階級のお人なんだ。



習い事のレベルの高さに
驚きすぎて

大事なことをスルーしそうに
なっていたけど

忘れちゃダメダメ!


この豪華なお屋敷の中は

今、私と琉衣くんの
二人だけってことを!!