セドリックと街に出かけてから二週間が経った。


「最近のジャンヌさんは、なんだかとっても元気だねぇ」


 朝食の席で、マリアがおもむろにそんなことを口にする。


「元気? わたしが?」

「うん! 前みたいに『起きたくない』『ご飯食べるの面倒くさい』って言わないし、お勤めも嫌って言わなくなったし。元気だなぁって」


 その途端、わたしはウッと言葉をつまらせてしまった。

 マリアが言ってることは全て純然たる事実だ。嫌味を言っているつもりはなくて、単純にわたしが元気に見えるのが嬉しいのだろう。

 だけど、他人の口から自分のだらしなさを聞かされると、ものすごく心臓に悪い。スミマセン、っていう気持ちになる。


(ほんと、スミマセン……)


 心のなかで誰ともなしに謝罪しつつ、わたしはコホン、と咳払いをした。


「一応ね……子供のマリアが頑張ってるんだし、わたしも少しは頑張らなきゃなぁと思ったんだよ」


 そう言ってグシャグシャと頭を撫でれば、マリアは「そっか〜〜」と満面の笑みを浮かべた。