国を守ることだってそう。
 前世では自衛隊とか軍とか、各国が有事に備えていたし、国連だとか条約だとか国境だとか、色んな制度や法律を整えて、皆が争わずに済む方法を模索していた。もちろん、戦争はゼロにはならなかったけど、マリア一人が生物兵器として存在する必要はない。


 貧困問題なんて論外。話題にすることすら馬鹿らしい。
 ああいうのは国が取り組むべき問題だ。
 食べずに腹を満たせても、単にそのとき生命が維持できたというだけで、何の意味もない。継続的に食えなければ、人は簡単に死んでしまう。それを小さな子供一人に託そうというのは馬鹿げている。


 しかも、前世とは違い、現世では人口の5%もの人間が魔法を使えるのだ。

 科学にできて魔法にできないことはない。
 少なくとも、わたしはそう確信している。

 現に、理数系がてんでだめなわたしでも、家電製品もどきをたくさん作れたんだもの。
 もっと工夫をして、沢山の人が力を合わせたら、今よりずっといい国が作れるはずなのに――――。


「あたしね、神殿の外に出られるようになったら、色んなところに行ってみたいんだ! 外には困っている人が沢山いるって聞いたの。王都に来れない人に、マリアのほうから会いにいくんだ」

「……!」