ひと夏のキセキ

「…嫌いなんかなれるわけねーだろ。だから困ってんだよ。俺らはもう、 “お前がアイツの患者だから嫌い“って言えるような関係性じゃねぇんだ」


「…それは……」


喜んでいい言葉なのかな。


遥輝がそんなふうに思っててくれて素直に嬉しい。


でも、遥輝は1ミリも嬉しくなさそうで、むしろ苦しそうなのが見ていてつらい。


私が神田先生の患者でいる限り遥輝は苦しみ続けるのだろうか。


でも私にはどうしてあげることもできない。


「…神田先生と毎日会ってるわけではないし、今は治療も最低限だよ。それでもダメかな?」


ただこうして納得してもらう以外方法を知らない。


「……俺だって分かってるよ。こうやってお前に文句言ったてどうしようもないことくらい分かってる。でも、どうしてもお前を見るとアイツがチラつく。お前を見るたびに"あぁこいつはアイツの患者なんだ"って思うのはごめんだ」


「じゃぁもう私とは会ってくれないってこと…?」