ひと夏のキセキ

―ガラガラッ


教室の扉が開く音がした。


遥輝かもしれない、と思うと緊張で振り向けない。


「お、遥輝おかえり」


「……キモ。お前がニコニコしてるときはロクなことがない」


やっぱり遥輝だ…。


遥輝がソファに近づいてくる足音がする。


「そこにいるの誰?あんまここに女を―…」


怪訝そうに窓側に回った遥輝とバッチリ目が合ってしまった。


「…なんで絢が」


ドクドクドクドクッ


平静を保とうとしているのに、心臓が言うことを聞いてくれない。


「……」


「……」


気まずい空気が流れている。


それを察してか、誰も何も言ってくれない。


なんて声をかければいい?


聞きたいことならたくさんあるのに。


どれを話してもいけない気がして何も言えない。