ひと夏のキセキ

先生も気を遣ってくれたのか、席は一番後ろの葵の隣。


一番最初に仲良くなった二人、浅野真澄(あさのますみ)ちゃんと、遠藤花織(えんどうかおり)ちゃんとも近い席だ。


「ねぇねぇ、なんで皆葵のことを葵様って呼んでるの?」


葵と反対側の隣である真澄ちゃんに小声で尋ねる。


ずっと気になってた。 


葵は女王様タイプの性格じゃないのにどうしてなんだろうって。
 

「うちの高校では、青涼に憧れる女の子が多いの。特に遥輝様と葵様は異次元のモテっぷりで、高嶺の花なんだ〜。ホントにかっこいいんだよ!」


「…そんなにモテるの?」


遥輝も葵みたいに女子に囲まれてる毎日なんだろうか。


「葵様はフレンドリーでカッコいい女性として憧れだし、遥輝様はとにかくイケメンで頭良くて運動神経も良くて、何よりクールなところがホントにカッコいいの。そりゃモテるよね」


真澄ちゃんの前の席の花織ちゃんも激しく熱弁する。