「絢!?どうしたのその顔」


病室に戻ると、葵にギョッとした顔で出迎えられてしまった。


遥輝の心の苦しみに触れたとたん、涙が止まらなくなってしまったんだ。


あんなふうに怒る遥輝、取り乱す遥輝を初めて見て、力になりたいと思った。


でも私には何もできなくて、その無力さが悔しかった。


「遥輝の野郎に泣かされた?」


「違うの…っ。遥輝は何も悪くなくて…」


ただ自分が情けなくて苦しくなっちゃっただけ。


遥輝は悪くない。


「ったく。こんな可愛い子を泣かすなっつーんだ。ホント腹立つ男だわ」


葵はそう言いながらティッシュを渡してくれた。


「ホントに遥輝のせいじゃないから…」


「どうだか。アイツは人の気持ちが分かんない奴だから」


葵は怒ってるみたいだけど、私はそんなふうに思ったことはない。


いつも私の心に寄り添ってくれる優しい人だ。


だからこそ、なにもできなかったことがショックだった。