ひと夏のキセキ

「葵がいると茶化されるのがダリぃんだよな」


遥輝がいたずらっ子な笑顔で話し始める。


「葵ってホント元気だよね。いつも明るくて私もパワーもらっちゃう」


遥輝のことでよくイジってくるけど、そんな葵と話しているからこそ病気のことを忘れられる。


葵は私が知らない遥輝の一面も知っているし、羨ましいなと思いながらも遥輝の話を聞いてしまう。


「元気しか取り柄ねぇかんな」


そうやって遥輝も葵をイジるし、葵も遥輝をイジる。


その関係性が羨ましいな…。


「ホントに葵と仲良いんだね」


「どこにそう思うタイミングがあったんだよ」


「だって…。葵と話してる時の方が素なのかなって…」


「俺は、誰に対してもずっと素だよ。別に葵だからとか絢だからとかって、人によって態度を変えたりはしない」


遥輝はそう言ってフッと微笑んだ。