ひと夏のキセキ

「あーや。拗ねた?ごめんって。出てこいよ。続き教えてやるから」


遥輝がカーテンを開け、布団越しに肩に触れてくる。


触れられた場所が熱を帯びたように熱くなり、そのまま顔まで赤くなっている自覚がある。


これじゃまたからかわれて出ていけない。 
 

「絢?大丈夫か?」


…心配してくれてるんだ。


私が何の反応もしないから。


優しい人。


この優しさは誰にでも向けられるものなのかな…。


それとも、私が病人だから?


遥輝のこの柔らかい声も、優しさも、全部全部私だけのものにしたい。


私、心が狭いなぁ…。


「なぁ、ちょっとだけ2人で病院散歩しよーぜ」


え……?


「ほら、行くぞ」


半ば強引に私の手を掴み、ベッドから降ろす遥輝。


そのままカーテンを開け、病室も出る。


「遥輝?どこ行くの?」


「別に。2人で喋りたかっただけ」


…!!


「わ…私も2人で話したかった」