ひと夏のキセキ

不意打ち、ずるい…。


「待ってるから。絢が元気になって帰ってくるの、ちゃんと待ってるから」


ギュッと手を握ってくれた。


温かくて優しくて、心強い。


「…怖いけど、頑張ってくるね」


「うん。絢なら大丈夫」


遠く離れたところに行くのは寂しいけど、遥輝はいつも心の中にいる。


それに…。


枕元の引き出しを開け、指輪とペンダントを取り出す。


「…捨ててなかったんだ」


遥輝とのペアリング。


メッセージ入りのペンダント。


ずっと捨てられずにいた。


病院を移るタイミングで処分することも考えたけど、結局踏ん切りがつかなかったんだ。


「捨てなくてよかった…」


「捨てたのかと思って、買い直したんだけど」