ひと夏のキセキ

個室に2人取り残され、気まずい沈黙があたりを包む。


「…なんで俺に黙って姿消そうとしたわけ」


沈黙を破ったのは、不機嫌そうな遥輝の声だった。


久しぶりに聞いた愛しい人の声に、不安定な心が刺激される。


あぁ…だめ。


意味わかんない涙が込み上げて来ちゃう。


「それにこれ、なんだよ」


突き付けられた紙は、私が神田先生に頼んで遥輝に返してもらったもの。


やっぱり遥輝は神田先生に会いに行ったんだね。


先生に会うのはきっとまだ抵抗があるはずなのに、私を探すために…。


「何が“遥輝を幸せににする”だよ。ふざけんな。俺はお前がいないと幸せじゃねぇんだよ。俺は、お前と一緒に、幸せになりてーんだよ」